どう思う?「SMASH」シーズン2で「RENT」のようなエピソード [海外ドラマ]

ブロードウェイのミュージカル界の裏側を描いた米ドラマ「SMASH」のシーズン2を毎週楽しんで観ています。でも1/26放送の14話「灯の消える夜」は、私はちょっと嫌な感じがしました。「RENT」の作者であるジョナサン・ラーソンが亡くなった時の状況と酷似した内容のエピソードだったからです。「「RENT」へのオマージュとして描かれたのでは?」という意見もあり、それもそうかも知れないんですが、私はそうは思えなくて、残念な気持ちになりました。私の中でどの辺がダメだったのか、考えて見ました。こんな意見もあるというくらいの話なので、興味のない方はスルーしてください。
*このエピソードの字幕版は2/2(日)午前3時にDlifeで放送されます。
「SMASH」シーズン2の14話のネタバレあり。
よく知られていることですが、「RENT」の作者ジョナサン・ラーソンは1996年1月25日未明、オフ・ブロードウェイのプレビュー公演が開幕するまさにその日の朝に、大動脈瘤破裂により急死。35歳の若さでした。彼の死を知った「RENT」の関係者は考えた末にジョナサンの追悼として、舞台用の衣装を着けずにコンサート形式で上演することに決定。でも、1幕最後の曲「La Vie Boheme」になった時に、マーク役のアンソニー・ラップがテーブルに飛び乗ったことをきっかけに他のキャストも踊りだし、2幕からは衣装はそのままで、通常通りの形で上演されました。(アンソニー・ラップ著の「Without You: A Memoir of Love, Loss, and the Musical Rent」にそのことが詳しく書かれている。)
一方、「SMASH」の方ですが、アルバイトをしながらミュージカルを書いていたカイル(作詞)とジミー(作曲)は、女優のカレンと知りあったことから、大物演出家デレクに演出してもらえることになり、マンハッタン・シアター・ワークショップの芸術監督のスコットにも認められて、オフ・ブロードウェイ公演に向けて準備を進めていました。しかし、色んな意見を聞きながら手を加えてでもいい作品にしたいカイルと自分の考えに固執するジミーは次第にすれ違い、ジミー自身の問題もあり、ふたりはついに決別。その直後カイルは交通事故で亡くなってしまいました。オフ・ブロードウェイの開幕前夜に。カイルの死によって、演出家は公演の中止を決断しましたが、その意に反して芸術監督は公演中止にしなかったため観客が劇場に押し寄せ、結局コンサート形式で上演することに。作曲家で主演男優でもあるジミーはカイルの死を知って出て行ってしまい、代役をたてて開演しますが、開演間もなくジミーが客席から登場して上演を中止させ、衣装は私服のまま舞台装置を出して通常通りの公演を行いました。
どうでしょうか?よく似ていますよね。ジョナサン・ラーソンも「RENT」のワークショップの時点まではアルバイトをしながら作曲に没頭する貧しい生活でした。ニューヨーク・シアター・ワークショップ(NYTW)の芸術監督ジム・ニコラに見いだされて、NYTWでワークショップを成功させ、同じNYTWでオフ・ブロードウェイ公演を目指していたのです。
私が一番イヤだったのは、SMASHが撮影した場所の問題です。私はSMASHをみていて前から気になっていたことがありました。それはドラマで出てくるマンハッタン・シアター・ワークショップの入り口の半円形の取っ手でした。

これです。私がはじめてNYに行った時に訪ねたNYTWの取っ手に似ているなと思ったのです。でももしかして、よく似たちがう場所なのかもと思っていましたが、今回あらためて確認してみました。
私の赤いブログのこちらに私が行ったNYTWの写真があります。比較してみてください。白いドアに半円形の取っ手がテレビの映像と一致していることがわかります。

こちらはSMASHの、劇場の外にお客さんが行列しているシーンです。白く光っているところが劇場の入り口です。
それを拡大したのがこの写真です。

注目すべきなのはドアに書いてある「79」という数字と水色の四角い看板です。先程紹介した赤いブログの一番上の写真でも黒いひさしに「79」の文字があります。(ネットでみつけたこちらの写真がより近い気がします。)79というのはNYTWの住所が79 East 4th Streetであることから、その番地を表しているのです。赤いブログには向かって左隣の水色の看板も写っています。だからおそらく間違いないと思います。
「RENT」の伝説のプレビュー公演がおこなわれたNYTWをそのまま撮影場所に使って、そっくりなエピソードを作るなんて、ちょっとやり過ぎなんじゃないかなと思ってしまいました。
でもちょっと待って。もう少し調べることがありました。
外観は確かにNYTWですが、「SMASH」の劇中劇「HIT LIST」を本当にNYTWで撮影したのか確認する必要がありました。外観だけ使うことはよくあることなので。(例えば、映画版「RENT」のライフカフェのシーンはNYに実在するVazac Hallを外観だけ使用し、屋内のシーンは別な場所で撮影した。Vazac Hallレポはこちら。)
まずは「SMASH」の映像で劇場の特徴を確認。

舞台から見た客席の様子。わかりにくいですが、真ん中に通路があり、左右に1列に10席程度の黒い椅子が並んでいます。中央の通路の両側には柵がありました。
比較のため、NYTWの公式サイトで内部の写真を探します。メインステージである79 East 4th Streetの劇場内の写真がこれです。

NYTW:http://www.nytw.org/rental_79.asp
全くちがいますね。通路の位置もちがうし、シートは真っ赤。ちなみにNYTW 4th Street Theatre(住所は83 East 4th Street)の劇場内の写真はこちら。椅子は黒いし、中央に通路がありますが、座席数も少ないし、通路側の柵もないのでここでもなさそう。
これらのことから、劇場内部は使用していないと考えられます。
そうだとしても、「RENT」の聖地とジョナサン・ラーソンが亡くなった時の有名なエピソードを利用して、視聴者の感情を揺さぶるみたいなやり方いうのは、他の人はわからないけど少なくとも私は、あまりいい気がしませんでした。
「SMASH」では、亡くなったカイルの死を利用して、「これは伝説になる」と言って意図的に利用している感じもあるのでなおさらです。しかも、それを指示した芸術監督を演じるのがジェシー・L・マーティンなんですよ。「RENT」のオリジナルキャストで、ジョナサンとはムーンダンスダイナーで一緒にバイトしていた仲で、作者が未明に亡くなったその日にあの伝説的なプレビュー公演に望んだメンバーのひとりだったんですよ。その人に、亡くなったカイルを利用する儲け主義の芸術監督をさせるって何?今思えば、ジェシー演じるスコットのオフィスには「rent」と書いてあるポスターが掲げてありました。その時はジェシーが出ているからだと好意的にみていたけど、それはドラマの中のマンハッタン・シアター・ワークショップをNYTWだと思わせる仕掛けだったんだんですね。なんかちょっとがっかりしてしまいました。
それでもこの続きもみるつもりではありますが。
問題の「SMASH」シーズン2の第14話「灯の消える夜」の字幕版の放送は今夜というか明日未明(2/2(日)午前3時)にDlifeで放送されます。(Dlifeの公式サイトには2/1(土)深夜3:00AMとありますが、わかりにくいですね。2/1と書くなら27:00とすべきでは?)見逃した方でご興味のある方は是非みてみてください。
◆Dlife「SMASH」
http://www.dlife.jp/lineup/drama/smash_s2/
◆「SMASH」のDVD
・シーズン1
◆シーズン2
2014-02-01 13:04
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物事をそのような見方しかできないなんて、可哀想。。
がんばってください。
by あ (2015-12-27 13:48)