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「イン・ザ・ハイツ」観てきました(4/12昼) [ミュージカル]

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4/12(土)13時開演の「イン・ザ・ハイツ」(Bunkamuraシアターコクーン)を観てきました。

私は「イン・ザ・ハイツ」は大好きなので、細かいところでは色々言いたいこともあるのですが、ラップにダンスにスペイン語まで出てくる作品の日本語化に成功したことは評価したいと思っています。

この作品を上演するにあたって一番の難関は、作者リン=マニュエル・ミランダ自らが初演し、膨大なラップと独特の声やパフォーマンスでその独自性を印象づけたウスナビというキャラクターを誰がどう演じるかというところだと思います。どうしても比べられてしまうので。その点Microさんはステージに出てきた時からこの人なら大丈夫と思ったくらい、私の思ったようなウスナビでした。言葉を詰め込みまくったラップをリズミカルに歌い切るカッコ良さの一方、ヴァネッサとのやりとりなどでみせる情けない部分も愛おしくて、彼こそ日本のウスナビだと納得しました。

ブロードウェイで観た時にはラテン系の女性たちの強さが印象的でしたが、今回は安崎求さんが演じていた愛情深いお父さんのケビンに2度泣かされました。女性たちもマルシアさん演じるダニエラ、前田美波里さん演じるアブエラ・クラウディア(アブエラとはおばあちゃんという意味)、樹里咲穗さん演じるカミラはそれぞれのソロ曲で迫力ある歌声を聴かせてくださいましたが、若干お上品かなとも思いました。

以降ネタバレあり。

「イン・ザ・ハイツ」
原案・作詞・作曲 リン=マニュエル・ミランダ
脚本 キアラ・アレグリア・ウデス
演出・振付 TETSUHARU
歌詞 KREVA

CAST
ベニー 松下優也
ウスナビ Micro [From Def Tech]
ニーナ 梅田彩佳 [AKB48]
ヴァネッサ 大塚千弘
ソニー 中河内雅貴
グラフィティ・ピート 大野幸人
ピラグア・ガイ 植原卓也
カーラ エリアンナ
ケヴィン・ロザリオ 安崎求
カミラ・ロザリオ 樹里咲穗
ダニエラ マルシア
アブエラ・クラウディア 前田美波里

ハイツの人々
丘山晴己 KEN [S☆RUSH] 平田愛咲 TOMOMI 菅谷真理恵 渡部沙智子


■登場人物とおおまかなあらすじ
マンハッタン北西部のワシントン・ハイツはヒスパニック系の人たち多く暮らす地域。食料雑貨店を営むウスナビといとこのソニー。血縁はないが彼らを育てたおばあちゃんのクラウディア。閉店を明日に控えたダニエラの美容室にはヴァネッサとカーラが働いている。タクシー会社を経営するケビンと妻のカミラの娘ニーナは成績優秀で待ちのみんなの期待を集めて一流大学に進学。ニーナの幼なじみでタクシー会社で働くベニーはアフリカ系でこの地域ではマイノリティにあたる。その他、ソニーの友達のアーティストのグラフィティ・ピート、ピラグアと呼ばれるかき氷を売る男性などがいる。

独立記念日の前日、いつものように店を開いたウスナビ。みんな夢を託して宝くじを買っていく。ソニーの機転で気になっていたヴァネッサとのデートの約束を取り付けるが・・・。一方、ニーナが帰ってきて地域の誇りと大歓迎されるが、みんなに隠していることがあった。悩むニーナを励ますベニーだったが・・・。暑い暑い夏の日に起きる奇跡と悲劇。それぞれにとって帰るべき場所はどこなのだろうか。


■セットの変更
会場に入ってまず思ったのは、セットがブロードウェイ版とちょっとちがうなということ。BW版はちょうど真ん中に通路があって左右に2階建てくらいの建物が建っていて、通路の向かって右側の建物の1階がウスナビの店でその右隣がダニエラの美容室、通路の左側がアブエラ・クラウディアが住んでいるアパートでその左がロザリオ家のタクシー会社、それぞれの2階が住居になっていました。

今回のセットは右側が大きくて、中心がずれた作りになっていて、2階もなく、右側の建物の2階部分には金管楽器のバンドが演奏したり、2幕ではベニーのアパートになったりしていました。それ以外はだいたいは同じですが、左右対称で真ん中にジョージ・ワシントン・ブリッジがみえるという配置が気に入っていたのでちょっと違和感。ちなみにジョージ・ワシントン・ブリッジは左側寄りにあります。

■女性キャストはおとなしめなキャスティング?
BW版と雰囲気がちがうなと思ったのは、全体的に女性がおとなしめかなということ。特にニーナとヴァネッサが可愛い感じの女性だったところが違和感がありました(そういう意図でキャスティングされたのかも)。BW版のヴァネッサは気が強くてセクシーな女性でニーナは服装もカジュアルであまり洒落っ気もない感じの人だったので。見た目はともかく、歌がもうちょっとパワーがあったらよかったなーと思いました、特にニーナが。衣装も似た感じのオレンジ系で、初めて観たら混乱するかも。

大人の女性たちもアブエラはガニ股で小太りなおばあちゃんで(もちろん衣装や演技などでそういう雰囲気を出しているということですが)、それなのに突然「カロール(暑い)!カロール!カロール!」と歌い始めるのが衝撃だったのですが、前田さんは美人で気品がありおばあちゃんとまでは・・・。ダニエラは下ネタを恥ずかしげもなくしゃべるようなオバさん、カミラも強い母でした。マルシアさんはセクシーでもあるしよかったんですけど、もっと下品でもよかったかも?

■ベニーが主役?ピラグア・ガイの存在感は?
男性キャストはだいたいはイメージ通りだったと思います(特にウスナビとケビン)。ソニーもウスナビより大きいしイケメンの中河内さんでどうかなと思いましたが、明るく無邪気な振る舞いでソニーらしくなってました。

気になったのはベニーが主役のように扱われていることです。パンフのキャスト順もトップでしたが、カーテンコールでウスナビのあとにニーナ(ベニーの彼女)、そしてベニーが最後というのがすごーく違和感がありました。ウスナビのMicroさんがミュージカル初出演だったせいもあるかもしれませんが、でもニーナの梅田さんだって初出演だし、チラシのあらすじはベニー中心に書かれていて(パンフはストーリー通りだけど)ベニーの松下さんを中心に売り込む作戦がありありでした。でも、この作品はウスナビがストーリーテラーになって進んでいく展開で最後に彼がどう決断するかが一番のポイントなので、そこをゆがめてしまうのはいただけないなと思いました。

ピラグア・ガイがおじさんじゃないのはまあいいとしても、植原さんはやや印象が薄かったかなーと思います。ピラグアおじさんのイメージは陽気で明るくて、話の本筋とは関係なくステージ上を横切る、氷かきをしながらまさにアイス・ブレーキング(緊張した雰囲気を切り替える)をする役なので、街の住人でありながら、あまり溶け込んではいけないと思うのです。今回は若い方だったので、ちょっと溶け込んでしまってたかなと。それと、ピラグアおじさんの明るくからっとした高めの声で、ダニエラが歌う「Carnaval Del Barrio」での掛け合いがあったはず。でもそこがあまり印象に残らなかったのが残念でした。女の子は1ドルだけど男は2ドルみたいな小ネタもあったはずだけどそれも省略されていたような。色々残念でした。

■その他、気づいたこと
・歌詞は日本語として違和感がなく、よかったと思います。
・ラップもある程度聞き取れるけれど、数人が同時に歌ったりすると誰のセリフも聞き取れなくなりました。音響的な問題でしょうか?

第一幕
・冒頭の最初のグラフィティ・ピートのダンスがバレエ風なのが意外でした。
・ニーナ、ちょっと緊張してた?「Breathe」の最後の「Just breathe」っていうところが音程が怪しかったです。
・ベニーはどうみてもアフリカンではないけど、それは日本人がやる以上無理なので問題なし。素敵なベニーでした。
・ケビンの「Inutil」では泣きました。立身出世を目指してNYに出てきたのに、才能にあふれた大切な娘を大学ひとつだしてやれない情けなさを歌った歌。男親の思いが切ないです。「Atencion」もよかった。
・ヴァネッサとニーナのキャラがかぶってる?
・カーラは可愛くてよかったです。
・クラブのシーンがかっこいい。
・「Blackout」(停電)のあと、fireworks(花火)について歌っているのに花火があがらなかった。手前のニーナとベニーのキスシーンを目立たせるため?花火がないと寂しいです。

第二幕
・ベニーとニーナのデュエット「Sunrise」は最初はよかったけど、だんだんスペイン語も日本語もよく聞き取れなくなりました。スペイン語と日本語(オリジナルは英語)で愛を語り合う素敵なシーンなのに惜しいなあ。
・前半はおとなしかったカミラが「Enough」で夫や娘への怒りを爆発。ここがよかったです。
・アブエラが亡くなり、ニーナとウスナビが思い出を語り合う歌でサビのところの歌詞が「忘れないで」みたいな感じだったのでそういう意味だったかな?とひっかかりました。あらためて歌詞をみると「everything you(又はI) know」というところだけが繰り返しになって、それぞれのフレーズごとに「Why Don't you tell me(聞かせて)」が頭に付いたり、知っているもの全てを残してNYに旅立ったとか、微妙に違う意味になっているという歌詞でしたね。その面白さを和訳で表現するのは無理なので、そこが若干引っかかっただけで、間違いではなかったのでしょう、たぶん。
・停電が続き暑さが増していき、消火栓を開けて涼しい風が吹いて来るまでの感じがすごく伝わってきてよかったです。
・最後の曲はウスナビの思いや地域の人たちの思いが重なってすごく雰囲気がよかったです。聞き取りは難しかったですが。

カーテンコール
ウスナビが最後じゃなくてビックリ。でも、松下さんが爽やかにお礼を言い、「何か一言」とMicroさんにふったら、Microさんが困ってすぐに美波里さんお願いしますとふっていたのをみて、場慣れしている松下さんをあえて座長?にしたのかなとふと思いました。でもそれは私の勝手な思い込みかも。Microさんはカテコで袖に引っ込む時に毎回ボデガ(雑貨屋)に入って道具をひとつ抱えて去っていってお客さんの笑いをとる余裕もあるくらいなので、そういうこととは関係なく、ベニーとニーナを主役風にしたい演出だったのかも。

■グッズ
私はいつもパンフレットを買うことにしているので、「イン・ザ・ハイツ」のももちろんゲットしました。その中で音楽評論家の中嶋薫さんの作品と作者の紹介のところがとても興味深かったです。作者のリン=マニュエル・ミランダが「屋根の上のヴァイオリン弾き」や「ウェスト・サイド・ストーリー」から大きな影響を受けていたということが書いてありました。「イン・ザ・ハイツ」の冒頭のタイトル曲が「屋根の〜」のオープニングの曲にならって、ワシントン・ハイツの住人を紹介しつつここで生きる悲哀を歌っているのだという指摘です。そうなのか〜。そう思うと、ジョナサン・ラーソンの「チック・チック・ブーン!」もそういうオープニングだったなーなんて思ったり。(といっても、私が知っているのはジョナサンの死後に上演された3人バージョンだから、ジョンの一人芝居だった時にどうだったのかはわかりませんが。)

それと、劇場内のカフェにフルーツアイスクリームバーみたいなものが売っていました。カゴに並べてふつうにおいてあったのでアイスではなくて冷たいフルーツだったのかな?夏だったらピラグアを売って欲しかったですね。(どんなものか食べてみたくて。)

◆「In The Heights」のCD
In the Heights

In the Heights

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ghostlight
  • 発売日: 2008/06/03
  • メディア: CD



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